一般相対性理論と宇宙論


ニュートリノの質量とヘリシティ


現在,ニュートリノが質量を持つという観測結果が得られている(2002年6月12日・東京大学宇宙線研究所・高エネルギー加速器研究機構).

ニュートリノの質量が0でないときはその質量がいかに小さくてもニュートリノには ヘリシティh=±1/2の2個のヘリシティ状態が存在し, また反ニュートリノについても同様である.

なお,ヘリシティhは, スピン角運動量Jを持った粒子が運動量pで 動いている場合の運動方向へのスピン成分であり,


で定義される. ヘリシティhが正となる粒子は「右巻きの粒子」と呼ばれ, スピン角運動量Jと運動量pの向きが同一の粒子である. ヘリシティhが負となる粒子は「左巻きの粒子」と呼ばれ, スピン角運動量Jと運動量pの向きが逆向きの粒子である.

一般に,スピン角運動量Jおよび質量を持つ粒子は 左巻きおよび右巻きの両成分を持たねばならない. なぜなら,粒子が質量を持っているために,粒子の速度は光速度より小さくなり, 観測系によって運動量pの向きを逆転することができ, また観測系によってはスピン角運動量Jの向きは変わらないので, ヘリシティhの符合を変えることができるからである. このことは,ニュートリノの質量が0でないときは h=−1/2のニュートリノが存在すれば, h=+1/2のニュートリノも存在することを意味する.

ところが,β崩壊(中性子)→(陽子)+(電子)+(反ニュートリノ)で作られる 反ニュートリノはすべてヘリシティh=+1/2の右巻きの粒子であり, (陽子)→(中性子)+(陽電子)+(ニュートリノ)で作られるニュートリノは すべてヘリシティh=−1/2の左巻きの粒子である.

反ニュートリノはすべてヘリシティh=+1/2の右巻きの粒子であり, ニュートリノはすべてヘリシティh=−1/2の左巻きの粒子であるのは, 反ニュートリノおよびニュートリノの質量が0であるためである.

反ニュートリノとニュートリノが同じかどうかを調べる実験(1955)

反ニュートリノとニュートリノが同じかどうかを調べる実験が1955年に行われた。原子炉から放出されるニュートリノはβ崩壊で放出されるので、反ニュートリノである。もし反ニュートリノとニュートリノが同じものなら
(反ニュートリノ)+Cl→Ar+e-
が起こり、違うものならば起こらないはずである。
この反応の断面積は
  (反ニュートリノ)+p→n+e+
の断面積の100分の1以下であり、反ニュートリノとニュートリノが別の粒子であることが証明された。 (参考:『物理学辞典』培風館)

ニュートリノを追い越すとヘリシティは逆転するか

回転しているこまを上から眺める場合と、下から眺める場合とでは、 右巻きと左巻きの逆転が起こる。 しかし、ある方向に進行しているニュートリノを追い越したというのでは ヘリシティは逆転しない。 なぜならヘリシティは、スピン角運動量を持った粒子が ある運動量で動いている場合の運動方向へのスピン成分であるからである。 ヘリシティについても’右巻き’、’左巻き’という用語を用いるけれども、 こまの回転のときとは意味合いが異なる。

ニュートリノを追い越して眺めるというのは、相対論的には、 ある慣性系で観測者から遠ざかるニュートリノを、 別の慣性系では観測者に近づいてくるように観測するということである。 いずれの慣性系で観測してもニュートリノのヘリシティは同じである。 ヘリシティが逆転するのは、あるスピンを持ったニュートリノを ある慣性系では正の方向に運動しているように観測する場合と、 別の慣性系では負の方向に運動しているように観測する場合で起こる。 ニュートリノが観測者に近づく場合と、観測者から遠ざかる場合では、 スピンの向きに対して運動の方向は同じであるため、 ヘリシティの逆転は起こらない。


一般相対性理論と宇宙論

制作:須田隆良(2001/1/30) 修正(2002/6/30)

E-Mail: knxkg921@ybb.ne.jp


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