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電子の半径(付録1)

粒子の大きさはその粒子と相互作用する粒子によって決められる.例えば陽子(p)の 半径は次のようにして見積もることができる.

陽子はp→n+π,p→p+πの過程でπ中間子を放出する. しかし,陽子が単独で 存在し,近くに他の陽子等の核子が存在しないときには,その中間子を吸収する相手がな く再び陽子に吸収される.一般に,ハイゼンベルクの不確定性原理により,ある短い時間 Δtにのみ存在しうる粒子を仮想粒子とよぶ.陽子は仮想π中間子を絶えず放出・吸収を 繰り返すπ中間子の雲を持つ粒子であり,その雲の広がりは,π中間子が最高速では光速 cで放出されると仮定して,L=c・Δtにより,およそ距離Lを半径とする球形である と考えることができる.ここで,Δtはハイゼンベルクの不確定性原理によって,

  (A1)
である.なお,mπはπ中間子の質量である.よって,
  (A2)
である.π中間子の質量は約2.5×10−28kgであるので,式(A2)により陽子の半径はおよ そL=1.4×10−15mとなる.これを一般の粒子に拡張すると,粒子の大きさはその粒子と相 互作用する仮想粒子の質量によって決められる.

電子(e)についても同様に考えることができる.電子と相互作用する仮想粒子の代表 例は光子(γ)である.光子の質量は0であるので,式(A2)に従うと電子の半径は無限 大ということになる.しかし,この結果は電子の半径が非常に小さいというという常識に 合致しない.

そこで,次のように考え直すことにする.式(A2)に基づいて電子の半径が無限大であ るという結果は,ある電子が他の電子等の荷電粒子と光子を介して相互作用しうる距離の 最大範囲が無限大であると解釈する.陽子とπ中間子の例では,ある陽子と他の陽 子等の核子がπ中間子を介して相互作用するには陽子の半径である1.4×10−15m程度に近 づかなければならないことを意味する.したがって,電子の半径が無限大であるというの は,ある電子が他の荷電粒子と光子を介して相互作用するのに粒子間の距離に制限がない ということを意味しているので矛盾がない.その距離に制限がないのだから,電子と荷電 粒子との距離がいくら遠く離れていても光子を介して相互作用することが可能である.同 様に,その距離に制限がないのだから,電子と荷電粒子との間の距離がいくら接近してい ても光子を介して相互作用することが可能である.つまり,電子と荷電粒子が光子のみを 介して相互作用するならば,1光年でも1mでも1Åでも相互作用できるように,2つの粒 子の間がいくら接近しても光子を介して相互作用できる.距離に制限がないとはそういう 意味である.

例えば,電子と電子の相互作用において,電子間の距離に 制限がないので,いくらでも電子と電子は接近して光子を介して相互作用することができ る.そのような過程で相互作用するときには電子の半径は存在しないというのが常 識だから,電磁相互作用により電子は光子を介して相互作用するときには,電子の半径は 0(正確には無限小)であると考えるのが自然である.逆にいえば,電子がこれ以上近づ けないという電子半径というものに出会うとすれば,陽子と中間子の例のように, 電子と電子の間に光子以外の粒子を介して相互作用することになる. 実際には電子は電磁相互作用だけでなく,ウィークボソン(W)を介して弱い相互作用をす る.したがって,電子半径を見積もることができる.

電子はe→ν+Wの過程でウィークボソン(W)を放出する.しかし,電子が単独で 存在し,近くに他の電子またはニュートリノ(ν)が存在しないときには,そのウィーク ボソンを吸収する相手がなく再びニュートリノに吸収されて電子となる.ウィークボソン の質量は約1.4×10−25kgであるので,式(A2)に従うと, 電子の半径はおよそ2.5×10−18mとなる. また,ウィークボソンは電荷があると考えられているので,その場合にはウィ ークボソン(W)は電磁相互作用をする. 電子半径が0であるとしたが,電子は ウィークボソン(W)と相互作用するために,電子は非常に小さいが一定の大きさがある と考えられる.

ところで,電子が電気的に自分自身に及ぼすエネルギーについての考察により電子に大きさがあ る場合,電子がなぜその大きさの範囲に電荷をつなぎとめておくことができるのか,とい う疑問がある.電子にはウィークボソン(W)の 雲の広がりがあるので,その範囲で電荷が広がっているが,その電荷を分離して取 り出すことは不可能である,と解釈する.

陽子にたくわえられている静電場のエネルギー

(追加:2003/12/4)

静電場が一様でなく, それが場所x=(x,y,z)の関数になっているときには, 静電場のエネルギーは

  (A3)
で与えられる.

半径aの球内に電荷Qが一様に分布しているとき, 半径aの球の内外の電場は,それぞれ

  (A4)
で与えられる. ただし,rは球の中心からの距離である. このとき,電場は中心のまわりに球対称に分布しているので, 式(A3)の体積積分は1重積分
  (A5)
に帰着する.式(A5)に式(A4)を代入すると
  (A6)
となる.

陽子の半径はa=0.8×10-15mの程度である. 陽子のもつ電荷量はQ=e=1.6×10-19Cである. したがって,Ue=(6/5)・Q2/8πε0a=1.7×10-13J である.

陽子の電磁質量

(追加:2003/12/5)

電荷Qをもつ半径aの微小な粒子が光速度に比べて小さい速度 で運動しているものとする. その粒子の存在する場所をとすると, その粒子のつくる磁場は次のように表される.

  (A7)
ここで,=(ξ,η,ζ)としている. いま粒子の運動方向をz軸にとって,=vと書くと, ×= v× (ξ+η+ζ) =v(ξ−η). したがって,{×= v(ξ+η). これより
  (A8)
すなわち,粒子のつくる磁場のエネルギーは
  (A9)
で与えられる.このv/2の前の係数 (μ/4π)・(2Q/3a) を電磁質量という.

陽子の場合,a=0.8×10−15m, Q=e=1.6×10−19C であるので,電磁質量は2.1×10−30kgである. 電子の質量は9.1×10−31kgであるので, 陽子の電磁質量と電子の質量は同程度である.

ウランの原子の核半径はa=6.8×10−15mの程度である. ウランの原子核のもつ電荷量は Q=92e=92×1.6×10−19=1.5×10−17C. したがって,電磁質量は2.2×10−27kgである.

注意:陽子,ウランの原子核の磁気能率は無視した.


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