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宇宙論

KEK(文部省 高エネルギー加速器研究機構)の以前の BELLE実験の紹介 には,「 現在の物理学の謎の一つに この宇宙には物質( 陽子と電子)ばかりが見つかり、反物質(反陽子と陽電子)はほとんど観測されていない。なぜ宇宙は均整がとれていないのだろうか? という問題があります。 」 と書いてあった.その問題を解くことが元来BELLE実験の目的であったらしい. この問題は,素粒子反応では物質と反物質は対称になっているにもかかわらず, この宇宙は物質と反物質について均整がとれておらず, 物質ばかり見つかるが,そうなっている理由が分からないことであると理解される. この問題に対しては,物質と反物質について宇宙が非対称になっていることを説明すれば 解答したことになるといえる. これは宇宙論における最大の問題であるし, この問題を解決すれば宇宙論におけるほとんどの問題を解決したことになる. この難問に挑戦しよう.

とりあえず標準ビッグバン宇宙モデルにより,宇宙は約100億年ほど前に 物質がぎっしりつまった状態から出発したとする. このモデルでは,初期宇宙は無の状態から突然に点状に生まれたというように おおよそ認識されている.このような認識を参考にしよう. 初期宇宙は高温で始まり,その後冷却して現在に至っていると考えられているので, 初期宇宙は原始火の玉ということがある. また,アインシュタインは,宇宙は空間的に一様でかつ等方であるという仮定をする. これは宇宙原理とよばれる.一様とは,凸凹がないことをいう. 等方とは,特別な方向に宇宙が速く膨張しているとか,またある軸の周りに自転している ことがないことをいう. アインシュタインが考える宇宙は,閉じた空間の静的な宇宙である. これも参考にするが, 標準ビッグバン宇宙モデルとはかなり異なる宇宙を想定していることに注意しよう.

とりあえずは通説的な標準ビッグバン宇宙モデルに従うと, 初期宇宙は素粒子物理学的には, 様々な素粒子の生成消滅が激しく繰り返される世界である. 素粒子の生成消滅の素過程では物質と反物質は完全に対称になっているにもかかわらず, 初期宇宙のどこかで,反物質に対して物質が数量的に優位になっていなければ 現在の物質だけが見出せる宇宙を説明することができない. そのような過程が素粒子物理学的に理解できないというのが, 現在の物理学の謎の一つである. そんな問題を解決するために,BELLE実験は行われるということらしい.

標準ビッグバン宇宙モデルにより初期宇宙はビッグバン後に等方的に膨張し続け, いつのまにか宇宙は物質が優位になるとともに, 素粒子的な反応がしだいになくなるというシナリオができあがる. 現在の物理学の謎の一つは,素粒子の生成消滅の各過程が物質,反物質が対称的になっているということから, ビッグバン時点またはそのごく近い時点では, 物質と反物質が同量であることが前提になっていることが分かる. 実際に物質と反物質は対消滅するとき,対生成されるときに完全にペアになっている. この前提がもっとも疑わしい(誰がそんな前提を決めたのか?). ビッグバン直後の初期宇宙は最初から物質が反物質に対して 優位であってもよさそうである. そうであれば,謎が謎でなくなり, 現在の宇宙では物質だけが観測されるのは当然であるということになろう.

そのような状況が可能であるか否かを考えるために, そんな状況を説明することができると考えられるものを探してみる. 高エネルギー物理学では,加速器実験において2ジェット現象がよく知られている. 2ジェット現象とは,電子と陽電子の衝突実験において, 2つのジェットが直線状反対方向に放出される現象をいい, ジェットとは,多数の粒子(メソンなど)がシャワー状に集中して放出される現象をいう. 2ジェット現象において,等方的な宇宙を考えるならば,2ジェットの両者を考えるよりも ジェットの一方を考える方が適当である. 一つのジェットの内部では,高エネルギーであるために物質と反物質の対生成や対消滅などの 素粒子反応が頻繁に起こっており,全体としては等方的に膨張していると考えてよい.

初期宇宙は2ジェットのうちの一方であるとしてみよう. そうすると,ジェットの出発点はクオークであるから, 初期宇宙は全体として物質が反物質に対して優位になっていてもよい. 宇宙は物質がぎっしりつまった点状で出発したと考える立場では, 宇宙の最初期はクオークであると考えるのが最も適当である. クオークは物質密度が無限大であるので物質がぎっしりつまった状態であり, 点状であるからである.その上,最初から反物質に対して物質が優位になっている.

シナリオによると,宇宙の最初期の記述は困難であるということになっている. これは,ちょうど電子やクオークなどの素粒子の内側にあるものを説明する各種理論が 難解であることに対応している. 例えば電子の電荷や質量について電子の内側にあるものを繰り込みなどによって説明する各種理論は いずれも難解である. そのような理論によって説明されることは,結局は単に電子という荷電粒子であることに変わりはない. 宇宙の最初期の記述が困難なのはクオークの内側にあるものを説明しようとしているから であると理解できる. 最初期宇宙を外側から観察すると,最初期宇宙は単なる素粒子に過ぎないであろう. クオークは対生成されるから,その対生成の過程がビッグバンであるとすることで, ビッグバンを指定することができる. こうすると,ビッグバンにより宇宙は始まるという説明ができる. 対生成により生成された物質と反物質の両者が宇宙なのでなく, 一方の側にある物質が宇宙である. これで宇宙において物質と反物質が非対称であることを説明することができた. これでも十分に解答したと思えるが,抽象化した記述に直しておく.

一般に真空に局所的に大きなエネルギーが供給されると物質が生成される. 例えば,2個の光子が衝突すると,電子と陽電子が対生成される. 宇宙もまた物質である. 三段論法により,真空に局所的に大きなエネルギーが供給されると宇宙が生成される. 例えば,2個の光子が衝突すると, 宇宙(物質から成る)と反宇宙(反物質から成る)が対生成される. その対生成の過程がビッグバンということになる.



宇宙の誕生においても エネルギー保存則は成り立つべきであるという要請を満たした記述になっている. また,ディラックの空孔理論も参考にしてある. 空孔理論によると,物質の存在しない真空は, 無限個の電子の基底状態(最低エネルギーの状態)である. 真空に局所的に大きなエネルギーが加えられることによって励起された電子が 実際に観測される電子であり, それによって生じた真空中の空孔が陽電子である. 真空からは電子だけでなく,すべての素粒子を生み出すことができるので, 真空はすべての素粒子の基底状態であると解釈できる. したがって,物質が反物質に対して優位にある宇宙は真空という基底状態 から大きなエネルギーによって物質側に大きく励起された励起状態であると解釈できる. もしその大きなエネルギーが使い尽くされると,宇宙は再び基底状態(真空)になると解釈できる.参考:付録5.真空と物質

また,ファインマン図も参考になる. ファインマン図は素粒子物理学的な因果関係を示すもので, すべての素粒子的な過程はファインマン図で図示し得ることを意味する. たとえ未知の素粒子や未知の反応が存在していたとしてもファインマン図による図示が可能である. なぜなら,もし図示できなければそれらはそもそも認識できないからである.

抽象化した記述とすることにより,宇宙の最初期はクオークであると考える場合のみならず, それとは異なる複雑な初期宇宙も同じ論理で誕生を説明することができる. シナリオによって初期宇宙が複雑難解に説明されていたとしても, その初期宇宙は真空中に局所的に大きなエネルギーが供給されることで生成可能である. なぜなら,その初期宇宙は物質であり,たとえ未知の素粒子が含まれていたとしても, 一般的に物質は真空中に局所的に大きなエネルギーが供給されることで生成されるからである. 宇宙論における宇宙は物質の宇宙であるから, どのような形態になろうとも初期宇宙は物質概念に入るべきである. とはいうものの,宇宙の最初期はクオークであると考えるのが最も簡単である.

なお,インフレーションや虚時間といった思想的に難解な議論に 立ち入らなくても宇宙の誕生を論理的に説明できているので, これらの難解な議論から学ぶことはなにもないであろう. 上で述べた三段論法が, 宇宙の誕生を説明した論理的な説明になっているということを強調しておく. 論理的とはこういうことである. しかし,非論理的な説明なら他にいくらでも可能である.

さらに,ビッグバン以前の状態ついても思索を進めることにする. 上で述べた例では,2個の光子が衝突することで宇宙の生成のエネルギーを供給したが, エネルギーの供給の方法はこれに限るものではない. 例えば,電子と陽電子が対消滅し,対消滅により生じた 仮想光子が宇宙と反宇宙を対生成するとしてもよい. この場合,宇宙と反宇宙の対生成の過程がビッグバンということになる. こちらの方が,実験的には分かりやすい. 2ジェット現象でのジェットの一方が宇宙であるという議論とも合致している.

この議論では,宇宙生成のためには宇宙生成のエネルギーを供給する供給源(例えば電子)が 存在していることが前提となる. この供給源はどうして生まれたのかという疑問が起こる. ビッグバン以前の状態はまったく未知である. 解決の一方策は,銀河系において恒星が誕生したり消滅したりするが,全体として恒星の数が 安定に保たれていることを参考にして, この宇宙はおよそ1000億光年くらいの大きさであると考えられているのであるから (佐藤文隆:『宇宙物理』(岩波講座 現代の物理学11),岩波書店(1995),1ページ), そんな宇宙を多数(例えば100億個)含むメタ-宇宙を考えればよい. 空間の広がりには上限を課す原理や理論は存在しないので, このような拡張はいかなる自然法則によっても禁止されない. なお,特殊相対性原理は信号の伝播速度に上限を課しているが, 空間の広がりに制限を課していない.

メタ-宇宙を考えることによって,メタ-宇宙において多数の宇宙は生成と消滅を繰り返しながら 互いに相互作用して存在しており, 相互作用の結果,宇宙を生み出す大きなエネルギーが供給されるというように理解できる. メタ-宇宙では,宇宙が生成したり,消滅したりしているのであるから, ある宇宙から別の初期宇宙やビッグバンを観察することが可能である. 宇宙は電子と陽電子の対消滅によって生成される場合には,実際に加速器を用いて実験することが可能であるから, 現実の加速器による電子と陽電子の衝突実験は寿命の短い小さい宇宙を生成していると考えられる.

これまでの議論では,宇宙の生成は説明したが, メタ-宇宙がどうしてできたかということにまだ答えていない. しかし,解答は簡単である. 一般に真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることにより物質が生成される. メタ-宇宙は物質である. したがって,真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることによりメタ-宇宙は生成される.

これでも,まだメタ-宇宙を生成する大きなエネルギーを供給する供給源が問題になる. 解決の一方策はメタ-宇宙を多数含むメタ-メタ-宇宙を考えることである. この拡張はいかなる自然法則にも禁止されない. メタ-メタ-宇宙において多数のメタ-宇宙が生成と消滅を繰り返しながら 互いに相互作用して存在しており,相互作用の結果,メタ-宇宙を生み出す大きなエネルギーが 真空に局所的に供給されることによりメタ-宇宙が生成されるというように理解できる. メタ-メタ-宇宙も物質であるから, 真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることによりメタ-メタ-宇宙は生成される.

メタ-メタ-宇宙を生成する大きなエネルギーを供給する供給源が問題となれば, メタ‐メタ‐宇宙を多数含むメタ-メタ-メタ-宇宙を考えればよい. このような宇宙の階層は際限なく繰り返すことができるので,階層性に際限がない. このような階層性の問題を解消するために,宇宙,メタ-宇宙,メタ-メタ-宇宙,…と すべての階層を含むものを「宇宙」と再定義する. 私たちが本当に知りたかったのは この再定義された「宇宙」がどのようにしてできるのかという問題かもしれない. 一般に真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることにより物質が生成される. 「宇宙」は物質である. したがって,真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることにより「宇宙」は生成される.

結局,宇宙は真空に局所的に大きなエネルギーが供給されることにより生成される.


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修正(2002/8/4)

E-Mail: knxkg921@ybb.ne.jp


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