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共変形式

共変形式とは,特殊相対性原理を満たしていることを明示的に表現した 物理法則の数学的な表現形式をいう. それは,特殊相対論的共変な演算子と, 特殊相対論的共変なスカラー,ベクトル,テンソルとの組み合わせで 表現されている.

電磁気学では,通常マクスウェル方程式が基礎方程式として記述されるが, マクスウェル方程式は,特殊相対論的共変な演算子と, 特殊相対論的共変なスカラー,ベクトル,テンソルとの組み合わせで記述されていないので, 共変形式で記述されていない.

そのため,特殊相対性原理を満たしているかどうか数式からは明らかでない. しかし,特殊相対性理論は電磁気学の考察の結果であるため, 当然に特殊相対性原理を満たしているはずである. そこで,電磁気学の法則を共変形式で書くと

  (1)
  (2)
となる.ここで,□はダランベール演算子とよばれ,光速度を c とすると
  (3)
で定義される.Δはラプラス演算子とよばれる. Ai=(A0,A)は4元ポテンシャルである. Aはベクトルポテンシャルとよばれ,x成分,y成分,z成分の3成分をもっている. μ0 は真空の透磁率であり,電磁気力の強さを表している. ji は4元電流密度であり, ji=(cρ,j)で定義される.ρは電荷密度である. jは電流密度ベクトルであり,x成分,y成分,z成分の3成分をもっている. xi=(ct,x,y,z)は時間成分と空間成分をもつ座標である.

将来の電磁気学の教科書は基礎方程式を,マクスウェル方程式でなく 方程式(1),(2)とするに違いない. なぜなら,方程式(1),(2)はマクスウェル方程式よりも少なく, 物理的意味も明瞭で記憶しやすいからである. すなわち,方程式(1)は波動方程式であり, 4元電流密度ji を源にして4元ポテンシャルAi が 真空中を光速で伝播することを表している. 一方,方程式(2)はローレンツ条件とよばれる. 方程式(1)をxi で偏微分すると,式(2)により

  (4)
となる.これは
  (5)
と書くと分かるように,電荷の保存則を表している. 電磁気学とは,波動方程式(1)にローレンツ条件(2)を課したものであるといえる.

驚くべきことに方程式(1),(2)から 単純な計算によってマクスウェル方程式を導くことができる. したがって,方程式(1),(2)を記憶しておけば, マクスウェル方程式を記憶していなくてもよい. この後,マクスウェル方程式を導くのであるが, その導出は一般相対性理論の理解する上で有意義であると考える. というのは,完全に分かっている電磁気学と, あまり分かっていない万有引力とを対比することによって, 分かっている状態というのが明らかになり, 万有引力についてどのようなことを述べれば 分かったことになるのかが把握されるようになるからである. しかし,この作業は必ずしも必要ではない. 次章を読み飛ばしてもよい.


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